私の妹はザルツブルクに住んでいます。彼女の勤める市内の劇場は閉鎖。甥っ子の学校も休校ということで、ほぼ毎日、定期便のスカイプ会話が日課になりました。ヨーロッパのウィルス禍の最初の犠牲となったイタリア北部と国境を接するオーストリア。妹からは、かなり早い時点で、オーストリア国鉄OBBがイタリアとの乗り入れを今日止めたらしいとか情報が私の耳に入っていました。オーストリアはイタリアと国境を接しているにしては耐えている方だと思います。でも、オーストリアにはマスクをする習慣がない、というより、マスクをすると覆面禁止法なる法律で捕まってしまう国であることに、妹は呆れていました。手を洗う習慣がないことは、甥っ子や妹の旦那を見ていればわかります。昨年、バルセロナを訪ねたときも、現地の方が普段使いするレストランは、テーブルを丁寧に拭きません。日常的な衛生の感覚が日本とは違うのでしょう。そこは結構大きいように思います。昨日、妹から、そのザルツブルクで、買い物に出るときマスクをつけることが義務付けられたと聞きました。マスクを笑っていたあの人たちが!でも、マスクなんて日常に売ってないでしょう?と訊いたところ、どうもスーパーの前で配ってくれるという話だとか。妹は半信半疑でしたけれど、本当にそうなるのかしら。東京では、ティッシュペーパーやトイレロールは普通に戻ってきましたが、マスクだけは以前、品薄が続いています。感染を防ぐ効果は薄いということですが、気持ちの問題として、していたい。あるいは自分が無症状で他人にうつしてはいけないという思いが、これだけのマスクを必要としています。必要な人に必要な分だけ。そう願うばかりです。
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ザルツブルクからウンタースベルクをのぞむ |
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自粛要請の出た日曜夜の新宿駅東口 |
「しゅうせつ」と読みます。その冬、最後の雪のこと。「初雪」の反対です。あまり使われないですね。気候変動の影響で、桜の開花や満開はどんどん早くなります。3月満開の桜が雪に震えた東京。これが2020年の終雪になるのでしょうか。新型ウィルスの外出自粛と、この雪のせいで、人影のない新宿・花園神社。静けさと華やかさが心に響きます。昨夜はオーストリアの甥っ子とスカイプで話しました。仕事仲間のギリシャ人演出家からは励ましメールが来ました。ボストンに住む訳詞家ともメールで次の舞台の話をしました。繋がっていることの大切さを感じます。頑張りどころです。
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花園神社 昼過ぎには雪はなく… |
晩酌の癖はないのですが、酒は好きです。胃の手術から1年は医者との約束を守り、断酒をしました。我ながらよく我慢できたと思います。その後は徐々にリハビリを重ね、今では酒量に関しては手術前の状態に回復しました。望むと望まざるとにかかわらずですが(笑)。若い時からずっとお世話になっている西麻布のフレンチで、先日、おいしいワインを出していただきました。82年ボルドー。素晴らしい年です。シャトー・レオヴィル・ラスカーズ。サンジュリアン村、レオヴィル3兄弟の筆頭です。ボルドー五大シャトーの一つラトゥールに隣接し、五大シャトーに迫るクオリティの銘醸。90年代以降は何度か飲んだことがありましたが、82の登場は嬉しかったです。ちょうど最後のトリュフと、出たばかりのアスペルジュと一緒に。上品な酸味、気品のある複合薫。味わいと語らいのうちに時間を忘れて楽しみました。酒も人も一期一会です。
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’82を愉しむ |