2020年12月9日水曜日

初雪の便り

今年の年末、妹のいるザルツブルグへ行くことは叶いそうにありません。さて、いつになったら海外との往来が再開するのか。寂しい限りです。ザルツブルグから初雪の便りが届きました。そこそこのロックダウンとなっているオーストリア。学校はそのまま。閉鎖なし。飲食店や劇場は閉鎖中。屋外でなら少人数の友人と遊べるそうです。雪になると子どもたちの賑やかな声が聞こえるそうです。一日の感染者数は東京都とザルツブルグ州の人数が同じくらい。そもそも人口を考えるとヨーロッパの厳しい状況がわかります。 

妹の家のベランダから…寒そう


2020年11月7日土曜日

秋の愉しみ

 久しぶりに深大寺と神代植物園に行きました。秋の素晴らしい陽気に誘われて。我が家からだと1時間もかかりません。平日というのに結構な人出でした。門前の老舗、嶋田家さんで新そばを堪能しました。蕎麦の風味は良いですね。もちろん昼から深大寺ビール。昼飲みはたまりません。植物園では、バラ園が美しく、コスモスも盛りでした。一日、たくさん歩きました。

創業は江戸時代!


昼飲み後の散歩




花もまた良し

2020年10月17日土曜日

新宿オペレッタ劇場

コロナの影響で音楽、舞台の活動は制限されています。いつかは元のようにと願いつつ、人が多く関わるオペラ制作は一番難しいのではと思います。ガレリア座の再開は今しばらくですが、私は仕事の方でオペレッタの舞台制作を始めます。来年1月の新宿オペレッタ劇場。オペレッタ・ニューイヤーコンサートと名付けてみました。名曲も無名曲も取り混ぜてのガラコンサート。会場の制限でいつもの半分の客席です。チームとして成熟する一方、新しいメンバーを入れて刺激を受けながら、お客様にご満足いただけるよう努めてまいります。チケットの発売は始まっています。


新宿オペレッタ劇場27

2020年6月7日日曜日

武蔵野の鳥の声に癒される


夜が明ける時間が少しずつ早くなっています。午前4時くらいになると空が白み始めます。家の裏手には栗林があり、鳥たちの鳴き声が聞こえてきます。今年は鶯、カッコウまで聞こえます。どれだけ田舎なんだ!と可笑しくなってしまうほど。でも姿を見ることはありません。まるで魔法のように、木々の向こう側から。谷渡りなど披露してくれると、思わず拍手です。朝、薫り高いコーヒーを飲みながら癒されています。
自室の窓から

2020年5月16日土曜日

きよしこの夜


今頃どうしてクリスマス?と笑われそうです。連休に外出できなかったのを良いことに身の回りの整理をしました。整理って、始めるとこれが作業膨大でなかなか終わらない。このところCD紹介に終始しているのもそのため。整理しているうちに懐かしいCDに出くわすのです。ザルツブルク近郊にオーベンドルフという小さな町があります。ここが有名なのは、「きよしこの夜」が生まれた場所だから。地区教会だったニコラウス教会の若き神父ヨセフ・モールが1818年のクリスマスのミサのためにと詞を書き、友人の音楽教師フランツ・クサヴァー・グルーバーが作曲したのが「きよしこの夜」でした。ニコラウス教会の跡地には現在、小さなチャペルが建てられています。小さな博物館のなかのお土産CDがこれです。演奏はオーベンドルフ・リーダーターフェル合奏団と合唱団。つまりは町の音楽隊です。とても良いです。温かい気持ちになります。幸せの尺度はそれぞれ。今年のクリスマスに再訪できるといいな。
ほっこりします

現在の小さなチャペル

小さな祈り

2020年5月14日木曜日

祈りのロッシーニ


大学時代、友人に誘われて、とあるアマチュアの合唱団に参加しました。そこで出会った曲がロッシーニ作曲の「小荘厳ミサ曲」(petit messe solenelle)でした。オペラで成功を収め、44歳にして作曲家を引退したロッシーニは、余生に僅かなピアノ曲や宗教曲を残しています。その人生の最晩年に作曲された「小荘厳ミサ曲」は、2台のピアノとハルモニウム伴奏による室内楽的作品として書かれ、のちに管弦楽にも編曲されました。ロッシーニらしいオペラティックさも具えながら敬虔な祈りに満ちています。ご紹介するのは管弦楽版。アントニオ・パッパーノ指揮、聖チェチーリア音楽院管弦楽団と合唱団による演奏です。特筆したいのは終局のアニュス・デイ。ロッシーニが終生愛した声種メゾ・ソプラノの独唱と合唱による深い祈りです。パッパーノは全曲を速めのテンポで押しながら、このアニュス・デイに来ると、ぐっとテンポを落とします。壮大な伽藍を埋めつくす真摯な音楽。管弦楽版だと宗教的色彩よりオペラっぽさが勝ってしまう演奏が多いなか、パッパーノの音楽への愛情と深い理解が心に届く名演です。
ロッシーニ最晩年の祈り

2020年5月13日水曜日

LPレコードをかけてみる


私がクラシックのレコード収集を本格化させた小学生高学年の頃は、まだLPレコードの時代でした。新しい録音だと2,500円前後。とても小学生には手が出ないので、1,000円から1,500円程度の廉価版がコレクションの主流でした。中古屋に出入りするようになったのは中学生だったか、高校生だったか。最近は、一周回ってLPの良さが認識され、ごく一部ではあるものの新しくプレスされる盤もありますが、時代の主流はストリーミング。あの大きなLP盤が主役に返り咲くことはないのです。良かったなあ。あの大きな紙のジャケット。〝ジャケ買い〟なんて言葉もあったくらいで、私もそういう衝動買いをしました。そんな〝ジャケ買い〟の1枚が、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ。有名な5番「春」と9番「クロイツェル」のカップリング。当時、あまり室内楽には興味がなかったのですが、スプリング・ソナタの鮮烈で豊潤な音に私は魅了されました。ジノ・フランチェスカッティのヴァイオリン、ロベール・カサドシュのピアノ。フランチェスカッティの演奏は、ティボー門下らしいエレガントさと、ヴァイオリニストだったイタリア人の父親譲りの歌ごころに溢れています。その演奏がジャケットの写真と、じつによくマッチしていて、何度もこのレコードを取り出して聞きました。今年の連休、外出控えのなか、久しぶりにLPでも聞こうかなと思ったときも、やはりこのレコードを手に取りました。慎重に黒い盤の端を持って、指紋がつかないように大切に、大切に。スタビライザーを乗せて、そっと針を落とす。ごそごそという針音の後に、あの瑞々しいヴァイオリンが!いいですよ、LPレコード。音楽とドキドキしながら向かい合っていた頃の気持ちが蘇りました。
みずみずしい音色です

2020年5月5日火曜日

知的発掘を楽しむ


私が公私ともにライフワークとして取り組んでいるのがオペレッタ作品の紹介です。もちろん「こうもり」や「メリー・ウィドウ」が素晴らしい作品であることは言うまでもありません。ですが、そればかりというのでは味気ない。シュトラウスでもレハールでも、知られていない作品はたくさんあります。そして、有名ではないオペレッタの作曲家たちもまだまだ。それを発掘して陽の目を見せるのが目下の私の楽しみであります。テノールの近藤政伸さんが、そんな私を「発掘ばかりやってる。」と評してくださいました。皮肉の方が強かったのかもしれませんが、私には純粋な誉め言葉にしか聞こえませんでした。知らない曲を聴く歓び。このCDはイスラエルの作曲家によるピアノ作品集です。20世紀の作曲家が5人取り上げられています。ヨアヒム・ストゥチェフスキ、セルジュ・ナトゥラ、ツヴィ・アヴニ、エデン・パルトス、モルデカイ・セター。まったく知りません。5人をまとめて評する危険はあるものの、総じて言えるのは作品を覆う静謐感と、西洋的でも東洋的でもない不可思議な浮遊感でしょうか。ピアノ作品だからかもしれません。演奏は、ヴァイオリニストとピアニスト、二足の草鞋をはくコーリャ・レッシング。演奏家であり、教育者である彼のもう一つの顔が、知られざる音楽の紹介者。博物館を訪れる気分で、ぜひ一聴を。

発掘は楽し

2020年5月2日土曜日

パタタス・アリオリを作ってみる


音楽と食事が人生の愉しみの私としては、不要不急の外出自粛はさほど苦にはなりません。外食ができないのはさみしいけれど、自宅で創作するのもまた楽しい作業です。今日はスペイン料理にチャレンジしてみました。料理といっても、私が作れる程度のもの。バルセロナを旅した折、どの店でも必ず食べた、じゃがいものにんにくソースかけ。それが、パタタス・アリオリ。甥っ子と、その親友と、私の3人で先を争って食べました。大人げないのですが、本当に旨い。スペイン料理は、シンプル・イズ・ベスト。じゃがいもは、ひと口大に茹でるか、揚げるか。どちらもありだそうです。そこにアリオリ・ソースをかけるだけ。魔法のソースも作り方は簡単。材料は、マヨネーズ、にんにくの擦ったもの、ビネガー、塩、胡椒、オリーブオイル。あとは好みで、牛乳やパセリ、レモン汁などという感じ。お店やお宅ごとの秘伝(笑)のレシピがあるそうです。あまりに単純なせいか、東京のスペイン料理屋であまり見かけたことがありません。が、バルセロナはどこの店にもありました。我ながら上出来!
バルセロナで食べたパタタス・アリオリ

こちらが自作のパタタス・アリオリ

2020年4月30日木曜日

初夏にバッハ


5月を目前にして東京も気温25度に迫る陽気になりました。何か清涼感のある音楽をと思っていたところに素敵なCDを見つけました。バッハのハープシコード協奏曲とヴァイオリン協奏曲をすべて網羅した5枚組のお得盤。ドイツのcpoというレーベルから出ています。ハープシコードの独奏と音楽監督がラルス・ウルリク・モルテンセン。演奏はデンマーク王立バロック管弦楽団《コンチェルト・コペンハーゲン》。1991年創立なので、まもなく30年目を迎える団体です。1955年生まれのモルテンセンは、デンマーク王立アカデミーでカレン・エングルンドに、ロンドンでトレヴァー・ピノックに師事しました。2台の協奏曲ではそのピノックが参加していて、モルテンセンとの師弟共演が聴き所です。アーノンクールやブリュッヘン、ビルスマを経て、ピノック、ガーディナー、コープマンなど、ここ50年ほどの演奏史のなかで、時代楽器、そしてその演奏法や解釈は日常のものとなりました。宗教曲と異なり、バッハの協奏曲は愉しみの要素が強い作品です。《コンチェルト・コペンハーゲン》はじつに軽快で、愉悦に富んだ演奏を聴かせてくれます。緩徐楽章の愛らしさもまた格別。サイダーのような涼やかさをぜひ!
サイダーのようにバッハ

2020年4月28日火曜日

贅沢は素敵だ


コロナ禍を戦争にたとえる政治家が多い。敵はウィルスだけではなく、人間の欲望も敵となりうるのでしょう。第二次大戦下の昭和15(1940)年、奢侈品等製造販売制限規則が実施され、官製標語として「ぜいたくは敵だ」のお札が町中に貼られたといいます。今は、「STAY HOME」ですが。そのお札の“敵”の前に、誰かさんが“素”と入れたんですね。「ぜいたくは素敵だ」。人間の仕掛けた愚かな戦争へのせめてものレジスト。ウィットやユーモアがなくては人間は生きられません。この厳しい状況のなか、なじみの西麻布のフレンチから《おうちでDiner》として届けられた美味しい贅沢を楽しみました。焼きたてのパンに、たっぷりのパテ・ド・カンパーニュ。牛ほほ肉の赤ワイン煮込みに鴨のコンフィ。王道のビストロ料理。シャンパンを添えて、優雅に音楽を聴きながら。敵が早々に退散することを願って。乾杯!

ビストロの定番が詰め合わせ

2020年4月25日土曜日

思い出に浸る


不要不急の外出…なんて特にないので、この機会に買いだめてあるCDを聴き漁っています。今日もその中から。2018年の年末にイタリアのヴェローナに行きました。仕事仲間の指揮者アンドレア・バッティストーニのご実家です。美味しいレストランを彼から教えてもらい、とても楽しい旅でした。2020年のヴェローナ音楽祭は彼の出番が多いそうなので、できれば再訪して音楽祭に行きたいと思っていたのですが、このコロナ禍でどうなるのかしら。ザルツブルグ音楽祭は5月に開催の有無を決定するそうです。オーストリア国内は収まるとしても、海外からの客を見込んでいる夏の音楽祭だから、ヨーロッパどこでも開催は難しいのではないでしょうか。2018年のヴェローナで買ったのが、2016年の音楽祭のハイライトCD。僕はこの類を“お土産CD”と言って、あまり手を出さないのですが、「トゥーランドット」をバッティが振っていたので、おお!と思わず購入。“お土産CD”ですが、演奏は一流。「アイーダ」はダニエル・オーレンの指揮。「椿姫」はカルロ・リッツィの指揮と、とても贅沢。良いとこどりなので、聴き休む暇がないですね。バッティの「トゥーランドット」は、カルロ・ヴェントレの輝かしいアリア「誰も寝てはならぬ」が聴きものでした。いつの日か、あの美しいアレーナで聴けることを願うばかりです。

円形劇場アレーナ

有名なジュリエットのバルコニー

贅沢なラインアップのお土産CD

2020年4月23日木曜日

ディナミーデン


Dynamiden。ワルツ王ヨハン・シュトラウスⅡの弟、ヨーゼフ・シュトラウスが作曲したワルツで、1865年に初演されました。当時、ウィーンの至るところで、さまざまな階級、業種の舞踏会が開かれていました。このワルツは工業舞踏会のために作られました。ディナミーデンとは、カールスルーエの工業大学教授フェルディナント・レッテンバッハーによる造語で、原子や分子が引き合う力を意味した単語だそうです。私が毎年、元旦はザルツブルグで過ごし、カメラータ・ザルツブルグのニューイヤーコンサートに出かけているため、オーストリアにいるのにウィーン・フィルのそれは日本に帰ってきてからブルーレイを購入して視聴しています。2020年ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートをつい先日、ようやく視聴して、私のこのお気に入りのワルツがアンコール前の最後に演奏されているので嬉しくなりました。この作品の第1ワルツが、同じシュトラウス姓のリヒャルトの方の歌劇「薔薇の騎士」オックス男爵のワルツとして登場するからです。粗野で高慢な貴族として登場するオックス男爵に充てられた最高に優雅なワルツ。元帥夫人マルシャリンの不貞が世間に知られる間際に、事態に気づいた男爵は事情を全部胸に収めるのです。貴族の矜持とでも言いましょうか。リヒャルトがこのワルツをオックスに充てた意味がよくわかります。2020年の指揮者はアンドリス・ネルソンス。2019年のティーレマンとは異なり、じつに楽しそうにドライブしています。指揮棒ではなく、手で表現するシーンも多く、このワルツもじつに繊細です。ティーレマンなら耳だけで十分ですが、ネルソンスの嬉しそうな顔は見る価値あり。映像での視聴をおすすめします。

ウィーンの粋

2020年4月18日土曜日

アップルパイ


私の好物です。幼い頃、洋菓子店に今ほどケーキの種類がありませんでした。いわば、ショートケーキ、モンブランとアップルパイが勢力図のすべて。子どもには、モンブランの良さはわかりませんから、ショートケーキとアップルパイが二大勢力。でも、近所の洋菓子店の生クリームと相性の悪かった少年の私は、アップルパイに軍配を挙げていました。ほぼ一択。オーストリアに行っても、チョコレートのザッハトルテよりは、エステルハージ・トルテか、アップフェル・シュトゥルーデル(つまりアップルパイ)を好んで食べます。生クリームをたっぷり添えているのが日本との違いです。さて、そのアップルパイ。先日、母の誕生日にリクエストがあり、近所にできたパン屋さんのアップルパイをカットしない状態で注文しました。ここのは丸型ではなく、棒状のパイ。生地がサクサクとして、リンゴが素晴らしく甘酸っぱい。好きなだけの大きさに切り分けて美味しく頂きました。
美味しかった!

2020年4月16日木曜日

視覚に訴える音楽


映像や照明を伴わないクラシック音楽のコンサートにとって(最近、プロジェクション・マッピングを使うコンサートもありますが)、視覚的効果はあるのでしょうか。私は確実に言えます。「ある」のです。最初の体験は「第九」でした。第4楽章。例のバリトンソロの始まる直前。オーケストラの強奏とともに立ち上がるバリトンと合唱団。全身にぞわっという感覚が走りました。緊張と高揚感。カッコイイ!これがコンサートの視覚的効果。わかりますよね。指揮者の目線やタクトの一閃もこれと同じ。だからこそ、音を度外視してもサントリーホールのP席が売れるのです。最近買ったCDに、ベルリオーズの「レクイエム」があります。ジョン・ネルソン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ベルリオーズ没後150年の命日にロンドンのセント・ポール大聖堂で行われたライブ映像がおまけDVDとしてついていました。CDに付録としてDVDを付ける神経がわからん。映像を見るのを後回しにしていたのですが、コロナウィルスのせいですっかり暇を持て余し、このおまけを見ることにしたのです。おお!視覚に訴える音楽。このおまけが凄かった。馬鹿にしてすみません。広大な大聖堂の中心に陣取る巨大なオーケストラ。二つの合唱団の前に横一列に並ぶ圧巻のティンパニ奏者10人。そして客席後方に4組のバンダ。ベルリオーズの狂気の音楽に、音響の伽藍と化した大聖堂がネルソンのタクトのもと揺れ、鳴り、響くのです。カッコイイ!見る音楽。ぜひお試しください。

視覚も満足



2020年4月12日日曜日

ワルターの運力


運力、“うんりき”と読みます。ヴェルディの歌劇「運命の力」を略して“うんりき”。我らガレリア座も2010年の第23回公演で取り上げたヴェルディ中期の傑作です。CDも映像も数多く残されています。そのなかで私のお気に入りが、ブルーノ・ワルター指揮のメトロポリタン歌劇場、1943年の実況録音です。昔のメトは、今とは比べ物にならないほど、大物指揮者がこぞってタクトを振り、素晴らしい音楽が鳴り響いていたようです。ワルターといえばモーツァルト、あるいはベートーヴェンの「田園」のように、どちらかといえば微温的な作品のイメージが一般ですが、この“うんりき”を聴けば、録音や人物イメージがいかにあやふやなものか分かります。序曲からとにかくすごい。直線的、男性的、テンポに一切の妥協を許さず、トスカニーニをも凌ぐ切れ感、そして終盤にかけてのドライブ感は半端ではありません。この序曲だけで、何回、聴き直したことか。今、手に入るのでしょうか。わかりませんが、もし、運よく手に入るのであれば、一聴されることをお勧めします。
聞いてみなけりゃわからない

2020年3月31日火曜日

ザルツブルクからの


私の妹はザルツブルクに住んでいます。彼女の勤める市内の劇場は閉鎖。甥っ子の学校も休校ということで、ほぼ毎日、定期便のスカイプ会話が日課になりました。ヨーロッパのウィルス禍の最初の犠牲となったイタリア北部と国境を接するオーストリア。妹からは、かなり早い時点で、オーストリア国鉄OBBがイタリアとの乗り入れを今日止めたらしいとか情報が私の耳に入っていました。オーストリアはイタリアと国境を接しているにしては耐えている方だと思います。でも、オーストリアにはマスクをする習慣がない、というより、マスクをすると覆面禁止法なる法律で捕まってしまう国であることに、妹は呆れていました。手を洗う習慣がないことは、甥っ子や妹の旦那を見ていればわかります。昨年、バルセロナを訪ねたときも、現地の方が普段使いするレストランは、テーブルを丁寧に拭きません。日常的な衛生の感覚が日本とは違うのでしょう。そこは結構大きいように思います。昨日、妹から、そのザルツブルクで、買い物に出るときマスクをつけることが義務付けられたと聞きました。マスクを笑っていたあの人たちが!でも、マスクなんて日常に売ってないでしょう?と訊いたところ、どうもスーパーの前で配ってくれるという話だとか。妹は半信半疑でしたけれど、本当にそうなるのかしら。東京では、ティッシュペーパーやトイレロールは普通に戻ってきましたが、マスクだけは以前、品薄が続いています。感染を防ぐ効果は薄いということですが、気持ちの問題として、していたい。あるいは自分が無症状で他人にうつしてはいけないという思いが、これだけのマスクを必要としています。必要な人に必要な分だけ。そう願うばかりです。

ザルツブルクからウンタースベルクをのぞむ

自粛要請の出た日曜夜の新宿駅東口

2020年3月30日月曜日

終雪


「しゅうせつ」と読みます。その冬、最後の雪のこと。「初雪」の反対です。あまり使われないですね。気候変動の影響で、桜の開花や満開はどんどん早くなります。3月満開の桜が雪に震えた東京。これが2020年の終雪になるのでしょうか。新型ウィルスの外出自粛と、この雪のせいで、人影のない新宿・花園神社。静けさと華やかさが心に響きます。昨夜はオーストリアの甥っ子とスカイプで話しました。仕事仲間のギリシャ人演出家からは励ましメールが来ました。ボストンに住む訳詞家ともメールで次の舞台の話をしました。繋がっていることの大切さを感じます。頑張りどころです。
花園神社 昼過ぎには雪はなく…

2020年3月26日木曜日

美酒礼賛


晩酌の癖はないのですが、酒は好きです。胃の手術から1年は医者との約束を守り、断酒をしました。我ながらよく我慢できたと思います。その後は徐々にリハビリを重ね、今では酒量に関しては手術前の状態に回復しました。望むと望まざるとにかかわらずですが(笑)。若い時からずっとお世話になっている西麻布のフレンチで、先日、おいしいワインを出していただきました。82年ボルドー。素晴らしい年です。シャトー・レオヴィル・ラスカーズ。サンジュリアン村、レオヴィル3兄弟の筆頭です。ボルドー五大シャトーの一つラトゥールに隣接し、五大シャトーに迫るクオリティの銘醸。90年代以降は何度か飲んだことがありましたが、82の登場は嬉しかったです。ちょうど最後のトリュフと、出たばかりのアスペルジュと一緒に。上品な酸味、気品のある複合薫。味わいと語らいのうちに時間を忘れて楽しみました。酒も人も一期一会です。


’82を愉しむ

2020年3月8日日曜日

小江戸散策


まだ桜には早いけれど、鰻が食べたくなり小江戸川越へ出かけました。我が家からは西武線で本当に僅かな時間で行ける小旅行です。さすがに新型ウィルスのせいで、いつもよりはずっと閑散とした川越でした。川越熊野神社にお参りをしてから、大正浪漫夢通りの中ほど、いつもなら何時間も待つ名店小川菊が待ち時間なし!ご飯少なめにしていただいて、美味しくいただきました。世の中が自粛ムードだと、どうしても逆らいたくなるのが私の性格。連日、どこかへ出かけご飯や酒を楽しんでいます。飲食店も苦しんでいます。菓子屋横丁にあるお漬物屋さんのご主人が「どうぞ使ってください」とマスクをくださいました。何が正解なのかはわかりません。でも、気持ちだけは柔らかくいたいなと思うばかりです。
西武線に乗って

熊野神社にお参り

名店 小川菊

うなぎ大好き!

いつもは賑わう街並みもひっそり気味

2020年2月23日日曜日

春を感じて


本番終了からたったの一週間。でも世の中はコロナ・ウィルス一色で、私もばたばたと働きました。それでも休日に稽古がなくなったので、家の近所を散歩する余裕ができました。私の家の周囲は武蔵野の自然が結構残っています。そこをぷらぷら歩くのはとても楽しいのです。今の季節は梅。紅梅、白梅が美しく、淡い香りが春の訪れを実感させてくれます。知り合いから、ふきのとうや、しいたけが送られてきて、母が天婦羅にしてくれました。視覚、嗅覚、味覚で春を感じる。本当に幸せです。

我が家裏手の梅の花

散歩コースの野川べり

桜のつぼみがそろそろ

川べりにはいろんな花が

水ぬるむ季節

そろそろ梅も終わりでしょうか

青空に映えます

2020年2月22日土曜日

サーカスの女王本番余話 その2


私たちガレリア座が心の底から誇れるもの。それは撤収の速さ、見事さです。音楽や芸術面でないのが残念ですが、到底アマチュアとは思えないこの迅速さは〝売り〟です。撤収への執念は仕込みの段階から始まっています。片付けを想像しながら仕込む。これです。使った道具はほったらかしにせず、元の場所に片づける。無駄に新しいテープを使わない。ごみを散らかさない。些細な気遣いの積み重ねが、撤収時のつけとして回ってこないのです。
本番に入ったら片付けへの執念は更に高まります。使い終えた小道具は、すぐに小道具の箱に収納します。衣装も然り。吊りバトンに吊ったパネルは飛ばさずに、そのまま幕間に撤去します。大道具も幕間には搬入口近くまで移動してしまいます。そうしていると、終幕には舞台袖に道具はもう何もないのです。素晴らしい!
終演後、客出しをしているうちに、オケのメンバーが総出で、リノリウムという舞台全面に敷いた巨大ゴム製カーペットを巻き、ジョゼット幕と呼ばれる白いレース幕を撤去してしまいます。搬入口にトラックが到着すると一斉に搬出作業が始まり、別動隊はオケピットの撤収に回るのです。今回、終演時刻1730分で、撤収完了はなんと19時。簡素な舞台とはいえ1時間半でオペラの舞台が片付くとは、ここだけはプロにも負けません。
「速い撤収、良い団体」 ガレリア座に刷り込まれた教えは、間違いなく国内オペラ団体の最高水準に達しています。満足、満足。

2020年2月20日木曜日

サーカスの女王本番余話 その1


音楽と動きの連動。私の一番のこだわりです。音楽とかけ離れた動きがいかに音楽劇の魅力を損なうか。今、ミュージカルに人気があるのも、きっと聴衆は、踊りを含めて音楽と合った動き、芝居、セリフ、照明など、やっぱり心地いいと感じるからではないかと思います。
今回、私がこだわったもののひとつが2幕フィナーレのオペラ・カーテン・ダウンでした。「オペラ・カーテン」、劇場によって「絞り緞帳」とも言います。赤い光沢のある布をドレープ状に上手下手の上方へ引き上げる幕のことです。これを備える劇場は必ずしも多くありません。理由は、高価だし、需要が多いとは言えないからです。でも、オペラやバレエをやるなら、このカーテンがどうしても欲しいのです。
舞台を暗くしたままでオペラ・カーテンを上げることを「ダークオープン」と呼びます。ダークオープンで開けておいて、1曲目の音の始まりと同時にカットインで明るい照明を当てるのは、じつに華やかで効果的です。「サーカスの女王」第1幕幕開けはこの手法を使いました。逆に第3幕では、前奏曲の最後で、無人の舞台を明るいままにしてオペラ・カーテンを開ける「ライトオープン」の手法を用いました。前奏曲の鳴っているうちから、聴衆をある日常へ自然に導くのが狙いです。前奏曲終わり間際でライトオープンさせ、曲終わりで、カール大公ホテルのロビーの電話をSE(サウンド・エフェクト=効果音)で鳴らしてみせて日常の空間を演出しました。ちなみに、今回の電話は、給仕長ペリカン役の北さんの動きを見ながら、1階席後方に陣取った音響さんが、呼び鈴の音を切って、受話器を上げる音を入れるという〝技〟を披露してくれました。
さて、話が戻って〝幕〟のことです。2幕フィナーレは、フェドーラへの愛をあきらめたミスターXがパーティー会場を去るシーンで幕切れを迎えます。ミスターXは、上手2尺8寸(約84㎝)の台上で、フェドーラに「ありがとう」と言い残します。このセリフの後に残る音楽は、正味1小節。その僅かな音楽の間に、ものすごい速さで幕を下ろしたい。私は音楽と幕の一致にこだわりました。
オペラ・カーテンはドレープ状のものを下ろすことから、通常の緞帳(これを「板緞」と言います)より時間がかかるのが通例です。ところが今回の会場「アプリコ」大ホールの緞帳は時間可変式で、しかも最速設定にすると、私のこの要求に答えられるのです。素晴らしい。はじめての会場稽古の際、私はダメ元で、「ありがとう」の後、幕のダウン・キュー(〝キュー〟は、合図、指示のこと)を伝えました。もちろん、マエストロ野町は十分心得ていて、いつもより少し長めに演奏を引っ張りました。そして、これ以上ないくらいドンピシャのタイミングで、幕が閉まると同時に音楽が鳴り終わったのです。ブラヴォー!やったぜ!音楽と舞台装置の一致。これもまた音楽劇の醍醐味。
ホールの舞台スタッフとのタッグが実った最高の瞬間でした。

2020年2月18日火曜日

本番を終えて


公演、無事、終了しました。ご来場いただきましたお客様、関係者の皆さま、本当にありがとうございました。私たちガレリア座の場合、通し稽古は公演前日にやります。本番当日の公演前は「小返し」といって、前日に上手くいかなかった箇所や、転換などテクニカル部分の調整に充てます。しかし、わがままな私は前日稽古の出来を見ながら、ふつふつと向上意欲が湧いてしまったのです。
もっとやりたい!とにかく良くしたい!本番日の小返しはそういう練習となりました。1幕フィナーレでミスターXとフェドーラが相対するシーン。メイン・カップルが気持ちを通じ合わせる大切なシーン。そう、私の大好きな「ばらの騎士」で、ゾフィーとオクタヴィアンのファースト・コンタクトのように、ここは台詞も歌もない。ただ、音楽だけが雄弁に語る。そうだ!ここは照明が二人だけに当たらなくてはいけないのだ!そこで、ああでもない、こうでもないと、あっちこっちのライトを照明さんに落としてもらって納得できるシーンに仕上げました。2幕フィナーレは、フェドーラがミスターXの裏切りを責め、ミスターXが自分は過去にフェドーラを愛した貴族であるその身分を明かすクライマックス。こここそ、我が一座オーケストラが劇伴の底力を見せなくてはなりません。スネアのひと叩き、ビオラの3拍目、フル・トゥッティのオケが楽譜に書かれたzurueckなる表記をどう演奏するか。オペラ、オペレッタが音楽劇である以上、その本質にこだわらなくて何のオペラ、オペレッタであるか。音楽、演出、照明、音響、舞台が一体となって表現する総合芸術を〝やる〟悦び。それを私は本番直前の小返しで堪能しました。そして本番はもちろんお客様のもの。お楽しみいただけましたでしょうか。

開演40分前の私の居場所は舞台下手

舞台監督席からの風景

2020年2月16日日曜日

開演ベルまで間もなく その2


本番を迎えます。本番会場の確保に始まり、楽譜のレンタル、訳詞作成、台本執筆などの水面下の作業を経て、稽古、稽古、ひたすら稽古。1年という時間がこの舞台を支えています。団員に加え、舞台、道具、照明、音響、受付など内外のスタッフが集結し、皆様をお迎えします。前日の最終通し稽古は、総練習の勢いそのままに、幸福だけど、どこか哀しいカールマンの世界観を良く表現できました。自画自賛ですけどね。日本ではまた当分お目にかかることがないであろう「サーカスの女王」。どうぞお楽しみください。あ、八木原の台本が長いので、上演時間は休憩を入れて約3時間半。腰を据えてじっくりとお楽しみください。
演出卓からの風景

2020年2月15日土曜日

開演ベルまで間もなく その1


さて、本番までのカウントダウンが始まりました。私と運搬主任の竹原君は、木曜日から高津さんで道具を借りたり、山梨の倉庫までナイト・ドライブをしたり動いていました。この動きが始まってしまうと本番終了まで矢のように早い。仕込みに協力してくれる団員諸氏が、オケピットづくりに、リノリウム敷きに、道具や幕の吊りこみに、道具の建て込みにと汗を流します。これこそ、アマチュア・オペラの醍醐味。みんなで作るのは音楽だけではないのです。舞台が仕上がると、あとは照明さんに舞台を渡します。今回もたくさんの照明ポイントが作られるのでしょう。わずか3時間の夢のために。頑張ります!
みんな力を合わせて

2020年2月10日月曜日

総練習を終えて


いい感じです。本当に、いい感じ。本番のちょうど一週間前となった2月9日。最後の総練習がありました。できるだけ実寸に近い会場を確保することはとても難しく、埼玉の奥まで出向いての稽古です。稽古というのは面白いもので、私たちのようなアマチュアがある程度、長い時間をかけて稽古していると、必ず中だるみの時期があり、そして本番直前にぐっと精度が上がります。ここまでできるなら、もっと早くこの水準にすればいいのにと、いつも思うのです。そして、かれこれ30年近くやってきて、絶対にそうならないことを知っています。でも、この瞬間が来るのが楽しくてやっていると言ってもいい。そんな感じです。総練習では絶対に決めたいところを徹底する。私のモットーです。たとえば序曲冒頭のオーケストラ。最初でこけると、ここから始まる音楽全部がへたくそだと思われてしまいます。大切なのは第一印象。とにかく最初の数小節は、命懸けで上手に演奏せよ!私の鉄則です。でも、本当にいい具合に仕上がってきました。あとは本番マジックを残すのみ。どうなりますやら。ご期待ください!
仕上がり上々!

2020年2月8日土曜日

ブリティッシュ・ナイト余話 その3


今回の「ベルシャザルの饗宴」には、新宿文化センターの誇る巨大なパイプオルガンが参加しました。わが国最初の本格的なカヴァイエ・コル型の大オルガンです。パイプ総数は5061本。ストップ数は70。フランスの歴史的名器を長年にわたり修復してきたアルフレッド・ケルン社の親方ダニエル・ケルン氏によって作成されました。「ベルシャザル」では、新宿文化センター専属オルガニストの高橋博子さんが、この名器をめいっぱい鳴らしてくれました。私もオケ合わせに立ち会わせていただき、オルガンとオーケストラのバランスをチェックしました。マエストロ・バッティストーニが引き出すオーケストラと合唱の迫力がものすごく、大オルガンもかき消されるくらい。高橋さんには、「大丈夫、もっとガンガン出していいです!」と促して、オルガンもフルスロットル。ホールいっぱいに大音響が渦を巻く、ウォルトンの壮絶な音楽絵巻を描き出しました。ご来場いただいた皆様は、オルガンの威力をご堪能いただけたのではないでしょうか。
新宿文化センターの大オルガン

2020年2月6日木曜日

ブリティッシュ・ナイト余話 その2


マエストロ・バッティストーニの紡ぐ音楽の魅力。たくさんの仕掛けがあると思います。私はそのなかでも、彼の作るフレーズ、その入り方と終わり方へのこだわりが好きです。先日の東京フィル定期の「幻想交響曲」。その第2楽章のワルツのメロディの切り方。あまり音を残さずにフッとすくうように切り上げる。まるで品の良い香水の残り香のように。マエストロにそのことを申し上げたところ、「そうそう、そうやったんです。いいでしょ?」って口ずさみながら、とっても嬉しそうでした。「ベルシャザル」の稽古でも、随所にそういう指導をされていたように思います。今回の演奏会で初共演となったチェロの三井静くんとのハイドンの協奏曲第1番。若者同士の溌溂とした演奏は、多くのお客様から素晴らしかったとのお声をいただきました。私にとって感動的だったのはその第2楽章。それはもう、繊細で、どうしたものかというくらい美しかった。初稽古で通した後、後打ちの2拍目と3拍目のトゥッティをどう演奏するか、マエストロがこだわって返しをしました。そこに敏感に反応する三井君もまた凄い。どうしたってテクニカルな両端楽章が目立つなか、研ぎ澄まされた感覚を静かにぶつけ合った二人の若者。あの中間楽章が私には忘れられません。
ブリティッシュ・ナイト プログラム

2020年2月5日水曜日

いざ、倉庫へ!


稽古も佳境に入ってきたこの時期、私にはプレイヤーとは違った忙しさがあります。ホールとの打合せ、照明・音響・舞台スタッフとの打合せ、借り出し道具の下見と手配、プログラムのご挨拶や解説の執筆。そして、毎回の本番前に必要になるのが、南アルプス市にあるガレリア座大道具倉庫の確認作業です。道具の搬出前に、どの道具を持ち出すのか、その道具が製作を依頼した大道具と寸法など合うのか、確認をする必要があります。2月にしては暖かいこの日。冬晴れの甲斐路を気持ちの良いドライブ(私は運転しませんが…笑)。昼過ぎに倉庫に着いて、階段の寸法が予定と違っていたことが判明し、急きょその場で対策を立てました。搬出する道具をまとめて作業は終了。昼ご飯は少し足をのばして清里まで。お気に入りのレストランROCKで、ソーセージ、ビーフカレーをたっぷりいただきました。ROCK自慢の麦酒も2杯ほど!さあ、いよいよ本番までカウントダウンです。

倉庫には過去の道具がたくさん!

清里では外せないROCK

旨い!清里ラガー

快晴ならあの山の向こうに富士山が…