2020年5月14日木曜日

祈りのロッシーニ


大学時代、友人に誘われて、とあるアマチュアの合唱団に参加しました。そこで出会った曲がロッシーニ作曲の「小荘厳ミサ曲」(petit messe solenelle)でした。オペラで成功を収め、44歳にして作曲家を引退したロッシーニは、余生に僅かなピアノ曲や宗教曲を残しています。その人生の最晩年に作曲された「小荘厳ミサ曲」は、2台のピアノとハルモニウム伴奏による室内楽的作品として書かれ、のちに管弦楽にも編曲されました。ロッシーニらしいオペラティックさも具えながら敬虔な祈りに満ちています。ご紹介するのは管弦楽版。アントニオ・パッパーノ指揮、聖チェチーリア音楽院管弦楽団と合唱団による演奏です。特筆したいのは終局のアニュス・デイ。ロッシーニが終生愛した声種メゾ・ソプラノの独唱と合唱による深い祈りです。パッパーノは全曲を速めのテンポで押しながら、このアニュス・デイに来ると、ぐっとテンポを落とします。壮大な伽藍を埋めつくす真摯な音楽。管弦楽版だと宗教的色彩よりオペラっぽさが勝ってしまう演奏が多いなか、パッパーノの音楽への愛情と深い理解が心に届く名演です。
ロッシーニ最晩年の祈り

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