2020年2月6日木曜日

ブリティッシュ・ナイト余話 その2


マエストロ・バッティストーニの紡ぐ音楽の魅力。たくさんの仕掛けがあると思います。私はそのなかでも、彼の作るフレーズ、その入り方と終わり方へのこだわりが好きです。先日の東京フィル定期の「幻想交響曲」。その第2楽章のワルツのメロディの切り方。あまり音を残さずにフッとすくうように切り上げる。まるで品の良い香水の残り香のように。マエストロにそのことを申し上げたところ、「そうそう、そうやったんです。いいでしょ?」って口ずさみながら、とっても嬉しそうでした。「ベルシャザル」の稽古でも、随所にそういう指導をされていたように思います。今回の演奏会で初共演となったチェロの三井静くんとのハイドンの協奏曲第1番。若者同士の溌溂とした演奏は、多くのお客様から素晴らしかったとのお声をいただきました。私にとって感動的だったのはその第2楽章。それはもう、繊細で、どうしたものかというくらい美しかった。初稽古で通した後、後打ちの2拍目と3拍目のトゥッティをどう演奏するか、マエストロがこだわって返しをしました。そこに敏感に反応する三井君もまた凄い。どうしたってテクニカルな両端楽章が目立つなか、研ぎ澄まされた感覚を静かにぶつけ合った二人の若者。あの中間楽章が私には忘れられません。
ブリティッシュ・ナイト プログラム

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