2020年2月8日土曜日

ブリティッシュ・ナイト余話 その3


今回の「ベルシャザルの饗宴」には、新宿文化センターの誇る巨大なパイプオルガンが参加しました。わが国最初の本格的なカヴァイエ・コル型の大オルガンです。パイプ総数は5061本。ストップ数は70。フランスの歴史的名器を長年にわたり修復してきたアルフレッド・ケルン社の親方ダニエル・ケルン氏によって作成されました。「ベルシャザル」では、新宿文化センター専属オルガニストの高橋博子さんが、この名器をめいっぱい鳴らしてくれました。私もオケ合わせに立ち会わせていただき、オルガンとオーケストラのバランスをチェックしました。マエストロ・バッティストーニが引き出すオーケストラと合唱の迫力がものすごく、大オルガンもかき消されるくらい。高橋さんには、「大丈夫、もっとガンガン出していいです!」と促して、オルガンもフルスロットル。ホールいっぱいに大音響が渦を巻く、ウォルトンの壮絶な音楽絵巻を描き出しました。ご来場いただいた皆様は、オルガンの威力をご堪能いただけたのではないでしょうか。
新宿文化センターの大オルガン

2020年2月6日木曜日

ブリティッシュ・ナイト余話 その2


マエストロ・バッティストーニの紡ぐ音楽の魅力。たくさんの仕掛けがあると思います。私はそのなかでも、彼の作るフレーズ、その入り方と終わり方へのこだわりが好きです。先日の東京フィル定期の「幻想交響曲」。その第2楽章のワルツのメロディの切り方。あまり音を残さずにフッとすくうように切り上げる。まるで品の良い香水の残り香のように。マエストロにそのことを申し上げたところ、「そうそう、そうやったんです。いいでしょ?」って口ずさみながら、とっても嬉しそうでした。「ベルシャザル」の稽古でも、随所にそういう指導をされていたように思います。今回の演奏会で初共演となったチェロの三井静くんとのハイドンの協奏曲第1番。若者同士の溌溂とした演奏は、多くのお客様から素晴らしかったとのお声をいただきました。私にとって感動的だったのはその第2楽章。それはもう、繊細で、どうしたものかというくらい美しかった。初稽古で通した後、後打ちの2拍目と3拍目のトゥッティをどう演奏するか、マエストロがこだわって返しをしました。そこに敏感に反応する三井君もまた凄い。どうしたってテクニカルな両端楽章が目立つなか、研ぎ澄まされた感覚を静かにぶつけ合った二人の若者。あの中間楽章が私には忘れられません。
ブリティッシュ・ナイト プログラム

2020年2月5日水曜日

いざ、倉庫へ!


稽古も佳境に入ってきたこの時期、私にはプレイヤーとは違った忙しさがあります。ホールとの打合せ、照明・音響・舞台スタッフとの打合せ、借り出し道具の下見と手配、プログラムのご挨拶や解説の執筆。そして、毎回の本番前に必要になるのが、南アルプス市にあるガレリア座大道具倉庫の確認作業です。道具の搬出前に、どの道具を持ち出すのか、その道具が製作を依頼した大道具と寸法など合うのか、確認をする必要があります。2月にしては暖かいこの日。冬晴れの甲斐路を気持ちの良いドライブ(私は運転しませんが…笑)。昼過ぎに倉庫に着いて、階段の寸法が予定と違っていたことが判明し、急きょその場で対策を立てました。搬出する道具をまとめて作業は終了。昼ご飯は少し足をのばして清里まで。お気に入りのレストランROCKで、ソーセージ、ビーフカレーをたっぷりいただきました。ROCK自慢の麦酒も2杯ほど!さあ、いよいよ本番までカウントダウンです。

倉庫には過去の道具がたくさん!

清里では外せないROCK

旨い!清里ラガー

快晴ならあの山の向こうに富士山が…

2020年2月4日火曜日

ブリティッシュ・ナイト余話 その1


ここで紹介させていただいた、新宿文化センターで「ブリティッシュ・ナイト」と銘打ったコンサートが終わりました。毎年、私の勤める新宿文化センターでは一般公募の合唱団を編成し、プロのオーケストラと合唱作品をやっています。イタリアの俊英アンドレア・バッティストーニと、東京フィルハーモニー交響楽団とタッグを組んで今年が4年目。ヴェルディ「レクイエム」、オルフ「カルミナ・ブラーナ」、マーラー「千人の交響曲」と共演を重ねてきました。そして、今年は、エルガー「威風堂々」と、ウォルトン「ベルシャザルの饗宴」でした。これまでの3年と比べて「ベルシャザルの饗宴」は、あまり日本では知られていません。でも、20世紀最高の合唱作品の一つとカラヤンが評したこの作品を日本のファンに聞いてもらいたい、マエストロと私たちの願いが一致しました。ジャズの手法を含め、複雑な要素をたくさん含んだ本作は、演奏時間40分弱ながら、演奏は困難を極めます。マエストロはこの公演に至るまで、東京フィルの定期公演で来日する機会を利用して、2回も合唱団の事前稽古に新宿文化センターを訪れ、指導にあたってくれました。以前、「カルミナ」のときに新宿区立小学校を訪れ、児童合唱の指導をしたときもそうでしたが、音楽を一緒に作っていこう!という彼の献身的な姿勢に誰もが巻き込まれていくのです。小学生の子どもたちでさえ!「ベルシャザル」はその極み、頂点だったように思います。200人余の合唱団、オーケストラの上段、上手下手の二群に配された金管のバンダ、配置しきれずに下手仮設花道まで作った打楽器群、そして新宿文化センターが誇る都内最大級のカヴァイエコル型パイプオルガンが咆哮する巨大な音楽絵巻は間違いなく一つの音楽シーンだったと思います。(つづく)

2020年1月30日木曜日

楽しきバルセロナ


年末年始の話の続きです。正月に帰国したら、私が訪れた直後にバルセロナで、タレントの武井壮さんが車上荒らしにあったというニュースがありました。現地の人、ディエゴママのマリアもスリが多いわよ!と言っていたので、私も相当用心して行ったんです。良い恰好はせず、どう見ても安手の肩掛けバッグを斜めがけ。母には貴重品を持たせない。「地球の歩き方」を見ながら歩かない等々。もちろん怪しい時間帯に、怪しい場所を歩けば、怪しい空気は流れるし、地下鉄は注意したほうが良いと感じましたが、ヨーロッパの観光地で普通に払うべき注意を払えば、それほどの危険はありません。兎にも角にも食べ物が美味しい!タパスと呼ばれる小皿料理を種類たくさん頼んでみんなでつつく。これが日本っぽい。地中海に面したバルセロナは、魚介のパエリアやムール貝のワイン蒸しなど海鮮も素晴らしいが、何より私のお気に入りとなったのは、パタタス・アリオリ。どこのバルにも必ずある「ジャガイモのアリオリソース」。アリオリソースは、にんにくとマヨネーズを和えた白いソース。これが店ごとに特徴があって楽しい。ジャガイモの出し方も、大きく切って揚げたり、スティック状のフライだったり、茹でたジャガイモを出す店もある。パンに乗せても良し。ワインのお供も良し。とにかく美味しい。おススメです。
絶品!パタタス・アリオリ!

2020年1月28日火曜日

バッティストーニ讃

アンドレア・バッティストーニ。クラシック・ファンなら説明の必要はないでしょう。東京フィルの首席指揮者で、二期会のオペラ公演にもたびたび登場している若手実力者です。彼の故郷ヴェローナでは夏の野外音楽祭に毎年登場していますし、今年は1月3日にニューイヤー・オペラコンサートを日本で振って、その後、アムステルダムでオランダ放送響を振ってコンセルトヘボウにもデビューを果たしました。そして再び日本へ。東京フィルの定期です。1月25日のサントリーホール公演に伺いました。前半は阪田知樹さんを迎えてラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。繊細なタッチの阪田さんにぴったり寄り添い、思いのほか淡泊なラフマニノフでした。後半はベルリオーズの幻想交響曲。これが圧巻。私はかねがね、彼の静かな音楽に思いを寄せているのですが、この日も、第2楽章のワルツのエレガントなことと、第3楽章の精妙なコントロールに感心しました。もう、ピアノ、ピアニシモをここまでやるかというくらいに極限まで詰めて、こちらの呼吸の音を消さないといけない?というくらい緊張感に満ちた音楽を聞かせてくれました。木管の方たちお疲れ様。本当に素晴らしかった。彼の要求に応えるのはしんどいですよね(笑)。私の勤める新宿文化センターでは、1月29日にバッティストーニを迎えて「ブリティッシュ・ナイト」というコンサートをやります。前半に、チェロの新鋭、三井静さんをソリストにハイドンの協奏曲第1番。三井君は、現在ミュンヘン・フィルに籍を置き、室内楽でも著名なソリストたちと共演している長身イケメンの大注目株です(名前、覚えておいて損はありません!)。後半メインは20世紀を代表する屈指の合唱作品、ウォルトンの「ベルシャザルの饗宴」です。母国イギリスではたまに聞かれますが、日本の舞台にかかるのは大変珍しい。映画音楽でも腕をふるったウォルトンの色彩豊かな作品です。「カルミナ・ブラーナ」が好きなら、きっと気に入っていただけると思います。あと、パイプオルガンと合唱の入った正規版の「威風堂々」もやります。あ、宣伝になってすみません!
東京フィル1月定期行きました!

2020年1月20日月曜日

年末年始は


糖尿病になり、決心して胃のスリーブ切除術という手術を受け、体重を落としたのが2年前。すっかり体重は安定期を迎え、主治医の先生からも、糖尿病は寛解。経過は良好とお褒めをいただきました。あとは体重が戻らないよう、毎日、体重計に乗り、自分をコントロールするのが課題です。さて、2019年末も妹が暮らしているオーストリア・ザルツブルクでクリスマスと年越しを迎えました。ベナツキー作曲のオペレッタ「白馬亭にて」の舞台になっている実在のホテル《白馬亭》には、父が存命のころからずっとお世話になっています。広場に面した真っ赤な新館も良いのですが、私は古き良き時代の名残をとどめる旧館の部屋が好きで、だいたいはそちらに宿泊します。湖に浮かぶ温水プールで泳ぎ、十分にお腹を空かせて、地元の食材を使った美味しい料理をいただく。もちろんワインはヴァッハウ!今回の旅ではバルセロナまで足を延ばし、スペイン料理を堪能しました。幸い、甥っ子の友だちのディエゴ君がクリスマス休暇でバルセロナに帰省していて、お母さまのマリアに連れられて、どう見ても観光客には入れないコアなお店に入ることもできました。ディエゴ君のおばあ様がグラナダ生まれの粋な女性で、私たちに見事なカスタネットさばきを披露してくださいました。今度はグラナダがいいなあ!

白馬亭 部屋の窓からザンクト・ヴォルフガング湖を臨む

クリスマス時期に湖に浮かぶ巨大ろうそく
楽しくて美味しいサンクト・ヴォルフガングのクリスマス市

現在の新館の玄関
なぜか我々のテーブルだけ飲む準備が…

朝の静かな湖